省エネ・節電

ZEBとは?種類やメリット、補助金について分かりやすく解説

ZEB(ゼブ)とは、建物における年間の消費エネルギーを自家発電によって創出されたエネルギーで補い、エネルギー消費量ゼロを目指す建物のことです。ZEBは従来の建物と比較すると、大幅に光熱費の削減を実現できます。

この記事では、ZEBの定義やZEH(ゼッチ)との違い、ZEBのメリット・デメリットなどを分かりやすく解説します。ZEBに関する補助金制度についても紹介しているため、ZEBを検討している企業の担当者はぜひ最後までご覧下さい。

Index
  1. ZEBとは?
  2. なぜZEBが注目されているのか
  3. ZEBの種類と定義
  4. 建築にZEBを取り入れるメリット
  5. ZEBのデメリット(注意点)
  6. ZEBの補助金制度(環境省・経済産業省)

ZEBとは?

ZEB(ゼブ)とは、快適な室内環境を維持しつつ、建物内で消費する一次エネルギーゼロのために工夫された建物のことです。ZEBの正式名称は「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」です。一次エネルギーは、建物内で使用する電気や熱などの自然エネルギーを指します。

建物にZEBを取り入れれば光熱費を抑えられるだけでなく、自家発電のみで建物内で消費する一次エネルギーを補うことができます。ZEBの実現には、ZEBの種類によってエネルギーの効率化や建物の断熱性能の高さに加えて、太陽光発電や風力発電などの創エネ技術の導入が必要なケースもあります。

1-1 ZEHとの違い

ZEH(ゼッチ)とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称で、一般的に「ゼッチ」と呼ばれています。ZEHはZEBと同様に、自家発電によって建物内で消費する一次エネルギーをゼロに抑えるための建物を指します。ZEHとZEBの違いは、対象となる建物の種類です。ZEBはビル・工場・学校などの規模の大きい建物を対象とする一方で、ZEHは一般住宅のみを対象としています。

なぜZEBが注目されているのか

ビルや工場などの建築でZEBが注目されているのは、地球温暖化問題が関係しています。2020年、政府は2050年をめどに温室効果ガスの排出量ゼロと脱炭素化社会の実現という2つの目標を掲げました。2021年には地球温暖化対策計画が作成され、業務部門に分類されるビルや施設に対してCO2の排出量の削減を求めています。さらに、ZEBの普及と実現のためのロードマップが策定され、ビルや工場、商業施設などを建築する際はZEBの実現に向けた取り組みが期待されています。

既に民間企業だけでなく、地方公共団体にも段階的にZEBを実現するための取り組みが進んでいます。ZEBをビルや工場などの建築に取り入れることで、持続可能な建物として不動産価値が向上する可能性があります。

ZEBの種類と定義

ZEBの種類は、達成状況によって「ZEB(ゼブ)」「Nearly ZEB(ニアリーゼブ)」「ZEB Ready(ゼブレディ)」「ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)」の4段階に分けられています。

3-1 ZEB

ZEBは、省エネと創エネの技術を活用することで一次エネルギーの消費量をゼロ以下まで削減します。ZEB化には新築・既築は問わず、省エネ計算:通称WEB PROの計算を行います。

ZEBの判断基準は以下の2点です。

  1. 再生可能エネルギーを除く場合: 一次エネルギー消費量(※)から50%以上の削減
  2. 再生可能エネルギーを含める場合:基準一次エネルギー消費量(※)から100%以上の削減

ZEBの判断基準を満たした建物は、自家発電によって建物内で消費するエネルギーを賄うことができるため外部からエネルギーを供給する必要がありません。

※H28年度省エネ基準との比較

3-2 Nearly ZEB

Nearly ZEB(ニアリーゼブ)は、省エネと創エネの活用によって一次エネルギーの消費量を25%以下まで削減できます。Nearly ZEBの判断基準は以下の通りです。

  1. 再生可能エネルギーを除く場合:基準一次エネルギー消費量(※)から50%以上の削減
  2. 再生可能エネルギーを含める場合:基準一次エネルギー消費量(※)から75%以上100%未満の削減

Nearly ZEBはZEBに次いで一次エネルギーの消費量を抑えることができます。

※H28年度省エネ基準との比較

3-3 ZEB Ready

ZEB Ready(ゼブレディ)は、省エネ技術の活用によって一次エネルギーの消費量を50%以下まで削減できます。ZEBやNearly ZEBと比べて創エネ技術を用いず、外壁の高断熱化と高効率の省エネ設備の設置で削減します。

ZEB Readyの判断基準は再生可能エネルギーを除く場合に限り、同時に基準一次エネルギー消費量(※)から50%以上の削減を実現できる建築物であることです。

※H28年度省エネ基準との比較

3-4 ZEB Oriented

ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)は、省エネとさらなる省エネの活用によって一次エネルギーの消費量を60%以下、または70%以下まで削減できます。ただし、対象となるのは延べ面積が10,000㎡以上の建物です。ZEB Orientedの判断基準は以下の通りです。

  1. 再生可能エネルギーを除き、用途別に基準一次エネルギー消費量(※)から規定の消費量を削減
  • 事務所、工場、学校:40%以上の一次エネルギー消費量の削減
  • ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所:30%以上の一次エネルギー消費量の削減

2. 未評価技術の導入によって更なる省エネの実現に向けた措置を行っている

※H28年度省エネ基準との比較

建築にZEBを取り入れるメリット

ZEBはビルや工場などの業務部門の建築に取り入れることで光熱費の削減はもちろん、災害時の事業継続性や不動産価値、企業イメージの向上などのメリットが期待できます。


ZEBを行うとSDGsにも貢献できます!

4-1 光熱費の削減

ZEBのメリット1つ目は、建物内で消費する一次エネルギーを最大でゼロ以下に抑えられることです。建物内で必要なエネルギーを自家発電で創出したエネルギー等で賄えるため、外部のエネルギーに依存する心配がありません。結果的に、電気やガスなどの光熱費の削減が可能です。

また、どのZEBの種類を検討するのかでエネルギー消費量の達成状況は異なります。既存の建物をZEB化する場合は、自社の状況に合わせて段階的にZEB化を図ることをおすすめします。

4-2 災害時の事業継続性の向上

ZEBのメリット2つ目は、自社の建物の建築設備に取り入れる結果、災害時の事業継続性の向上に繋がることです。建物に再生可能エネルギー設備を設置することで、災害で停電が起こった場合でも自家発電によって事業を継続させられます。

また、ZEBは企業がBCP(事業継続計画)を策定する際のインフラにも役立ちます。非常時の防災拠点として活用できるため、自社の従業員だけでなく地域住民の避難場所として地域に貢献することも可能です。

4-3 快適性や・生産性の向上

ZEBのメリット3つ目は、従業員にとって快適な室内環境を保てることです。断熱性が低い建物の場合、夏は暑く冬は寒くなりやすいため、エアコンや空調設備の使用頻度が増え、結果的に光熱費が上がる可能性があります。ZEBによって快適な温度や湿度を維持できれば、従業員はストレスなく業務に向き合うことができ、個人のパフォーマンスの向上、ならびに組織全体の生産性の向上が期待できます。

4-4 SDGsへの貢献・省エネ

ZEBのメリット4つ目は、SDGsへの貢献や省エネにも繋がることです。ZEBは太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを用いて自家発電を行うため、永続的に利用できるエネルギーを確保できます。同時に、石油や天然ガスなどの化石燃料を用いた外部のエネルギーの消費量を抑えることで温室効果ガスの排出量の削減に貢献できる上に、高効率の省エネ設備の設置により、エネルギーの効率化も図れます。

4-5 不動産価値の向上

ZEBのメリット5つ目は、自社の建物の不動産価値を向上させることです。近年、投資家はSDGsや環境対策に取り組む企業へ投資する傾向が高まっており、自社の建物にもZEB化への取り組みを検討する企業が増えています。ZEBを建物に取り入れることで温室効果ガスの消費量の削減や脱炭素社会の実現に貢献できるため、他の建物と比較しても不動産価値が高まります。ZEB認証を取得した建物のオーナーであれば、賃料アップによる増収も期待できます。

4-6 企業イメージの向上

ZEBのメリット6つ目は、企業イメージの向上を図れることです。ZEBは地球環境にやさしいだけでなく、従業員の就労環境の改善にも役立ちます。ZEB認証を受けた建物を所有する企業は企業価値が高く、社会的な信用が向上する傾向があります。そのため、ZEB認証を受けていることを社外に発信すれば、さまざまな取り組みを積極的に行っている企業として社会的な評価を高めることも可能です。会社の経営にプラスに働くでしょう。

ZEBのデメリット(注意点)

ZEBは光熱費の削減や企業イメージの向上など、さまざまなメリットがある一方で、建築コストが高くなる、ZEBの専門知識が必要などのデメリットも存在します。

5-1 建築コストが高くなる

ZEBのデメリットは、建物の建築コストが高くなりやすいことです。ZEBに取り組むためには省エネや創エネを可能にする設備の導入が欠かせないため、一般的な建物と比べても設備投資額が高くなります。

ただし、省エネ設備と創エネ設備の両方の設置が必要なZEBとNearly ZEBに対し、省エネ設備のみを設置するZEB ReadyとZEB Orientedの方が初期投資費用を抑えることが可能です。ZEB化による建築コストを抑えたい場合は、段階的にZEB化を目指すことをおすすめします。

5-2 イニシャルコストがかかる

ZEB達成には省エネ効率の高い高効率機器を導入頂くことが重要になりますので、当然イニシャルコストはかかります。しかし、長期的に見れば高効率機器を導入頂くことで光熱費の削減によって高い費用対効果が期待できます。

5-3 ZEBの基準クリアには専門知識が必要

ZEBの実現は非常に難易度が高く、基準をクリアするには高度な専門知識が必須です。例えば、一次エネルギーの消費量ゼロ以下を目指すZEBに取り組む場合、省エネ技術や創エネ技術などを用いて一次エネルギー消費量の削減率100%以上を達成しなければなりません。目標を確実に達成するには、計画立案の段階からZEBの専門知識やノウハウを持つ業者と相談し、綿密な計画を立てる必要があります。


ダイキンはZEBプランナー制度に登録しています。
ZEBプランナー登録番号:ZEB2021P-00060-GC

ZEBプランナーとは(一般社団法人)環境協創イニシアチブが認可したZEBや、省エネ建築物を設計するための技術や知見を保有する事業者のことです。ZEBに関する補助金申請などにZEBプランナーの資格が必要となります。

ZEBの補助金制度(環境省・経済産業省)

ZEBに取り組む企業は、ZEBに関する補助金制度を利用できる場合があります。ZEBの補助金制度を運営しているのは環境省や経済産業省で、補助金の情報は随時更新されています。補助金制度は申請期間が定められているものの、予算に到達した時点で打ち切られる可能性もあるため、補助金制度を利用したい場合は早めに申請しましょう。

また、ZEBの補助金制度は複数あり、それぞれ満たすべき要件も異なります。検討する際はご自身でリサーチして下さい。

6-1 令和6年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金

二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金は環境省が運営する事業の1つで、CO2排出量の削減に取り組む事業者に給付金を付与する目的で実施されています。二酸化炭素排出抑制対策事業費に関する補助金制度は複数あり、補助率は申請する事業内容によって異なります。例えば、ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業を例に、補助率や補助対象を見てみましょう。

  • 補助率:2/3~1/4
  • 補助対象:地方公共団体、民間企業・医療法人など

補助率は2/3~1/4となっており、申請する建物が新築建築物か既存建築物か、または延べ面積によって異なります。

6-1-1 申請条件

二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金では一般公募が行われ、応募者の中から書面審査と評価委員会による審査によって補助事業者が採択されます。提出書類の内容によっては、評価委員会から追加条件を出されたり、事業実施計画書の内容変更が指示されたりする場合もあります。

二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の申請条件は申請する事業によって異なるため、ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業を例に申請条件を確認してみましょう。

  • ZEBの基準を満たしている
  • 区分ごとにエネルギーの計量・計測を行い、データの収集・分析・評価ができる管理体制を整備している
  • 需要側設備をはじめとする通信・制御のための機器を導入している
  • 新築建築物の場合、再エネ設備を導入している
  • ZEBリーディング・オーナーへ登録し、ZEBプランナーが関与している事業である

6-1-2 審査項目・加点ポイント

二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の審査は、有識者や環境省職員によって構成される評価委員会が実施します。以下の採点基準を基に応募者の評価を行います。

  • A(優れている):10点または20点
  • B(やや優れている):8点または16点
  • C(普通):6点または12点
  • D(やや劣る):4点または8点
  • E(劣る):0点

主な審査項目は以下の通りです。

  1. 補助事業の実施
  • 補助事業の実施方針は事業遂行において適切か
  • 間接補助事業の指導監督を実施するための方針は適切か
  • 補助事業の交付事務の効率化の取り組みは適切か

2. 実施体制と事務費用の適正性

  • 補助事業を適切に行うための適正な体制が整備されているか
  • 補助事業実施において、法令遵守や情報セキュリティの確保に必要な体制が整備されているか
  • 補助事業に関する事務にかける費用は適正で合理的か

3. 法人の業務実績

  • 執行団体として豊富な実施実績があるか

補助金の上限に関わらず、2の補助事業に関する事務費用の総額が低い方が高い配点になります。

6-2 令和6年度 住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業費

住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業費は、経済産業省の資源エネルギー庁が運営する事業です。ZEB実証事業や次世代省エネ建材の実証支援事業(間接補助事業)などの実施に伴う経費の一部を補助する目的で実施されています。補助金の補助率や補助対象は以下の通りです。

  • 補助率:補助事業者(10/10)、間接補助事業者(3/2~1/2)
  • 補助対象:民間企業・学校法人・医療法人など

補助金の補助率は補助事業者と間接補助事業者で異なります。間接補助事業者は事業ごとに補助率が設定されています。

6-2-1 申請条件

住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業費の申請は、以下の要件を満たした民間団体が行えます。

  • 日本に事業拠点がある
  • 住宅・建築物の省エネルギー化に関する技術に精通し、的確に事業を遂行できる組織や人員を確保している
  • 事業を円滑に進めるための経営基盤があり、十分な管理能力と資金がある
  • 補助事業に関する普及促進を行うための能力がある
  • 補助事業で知り得た情報の秘密保持を徹底できる
  • 補助事業終了後に補助事業者の財産処分の手続きや会計検査への対応に必要な書類を一定期間保存できる
  • 申請者は、経済産業省から補助金の交付停止措置や指名停止措置が講じられていない者である
  • 採択者の決定後に、採択結果や事業者名、採択金額などの情報公開に同意できる
  • 政府が立案した政策への協力要請があった場合に応じられる

6-2-2 審査項目・加点ポイント

住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業費の審査は応募書類に基づいて行われますが、必要に応じて追加資料の提出やヒアリングの実施が求められることもあります。審査を行うのは有識者で構成される審査委員会です。申請者は審査委員会の前でプレゼンテーションを行います。主な審査項目は以下の通りです。

  1. 応募資格の内容を満たしているか
  2. 提案内容が交付対象になるか
  3. 提案内容が事業目的と一致しているか
  4. 事業の実施方法やスケジュールは現実的な内容か
  5. 事業遂行のための資金力や資金調達能力があるか
  6. 事業の実施方法は成果を高めるための効果的な工夫がなされているか
  7. 関連分野に関する知見があるか
  8. 事業規模に適した実施体制が整備されているか
  9. コストパフォーマンスが優れており、事業に必要な経費や費目が適正に積算されているか
  10. 事業全体の企画立案や執行管理部分は第三者に委託または外注していないか
  11. 業務管理費に対する委託費や外注費の合計額の割合が50%を超えていないか、超えている場合は相当な理由があるか
  12. 賃上げの取り組みをしているか
  13. ワークライフバランスの取り組みをしているか

賃上げやワークライフバランスに関する取り組みはZEBの取り組みと直接関係ないものの、審査時の評価を上げるポイントになります。

ZEBの導入はダイキンへ相談!

ZEBは、地球温暖化問題の対策や脱炭素社会の実現などに繋がる重要な取り組みです。自社の建物にZEBを取り入れることで、光熱費の削減やBPO対策、SDGsへの貢献などのさまざまなメリットが得られます。

ただし、ZEBの基準をクリアするには計画段階から専門知識を有するZEBプランナーと相談しながら取り組む必要があります。ZEBプランナーとは、省エネ建築物の設計に必要な技術や知見を持つ事業者のことです。ZEBの専門知識が豊富なZEBプランナーに相談するなら、ダイキンがおすすめです。

ダイキンはZEBプランナー制度に登録しており、ZEBに関する補助金申請のサポートを行っています。ZEBに関する相談がある場合は、ダイキンにお問い合わせ下さい。

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