工場に適したエアコンとは?必要性や空調の種類、選ぶポイントを紹介

工場に空調設備を導入したいものの、エアコンの種類や特徴、選び方が分からない方もいるでしょう。エアコンには大きく分けて、業務用エアコンと家庭用エアコンがあります。業務用エアコンの中には「オフィス用」と「工場用」があります。それぞれの特徴を理解していなければ自社の工場に適した空調を選ぶのは難しくなります。
そこで本記事では、工場に適した空調の種類や選ぶ際のコツを紹介します。おすすめの工場用エアコンも紹介しているので、合わせて参考にしてください。記事を読み終える頃には、工場に適した空調を選ぶポイントが分かり、工場をより良い環境に整えられるようになるはずです。
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1.工場のエアコンの必要性

工場の管理者は従業員の熱中症対策を行うために、工場内の温度と湿度を管理する必要があります。扇風機は工場内の空気を用いて風を送る機能はあるものの、温度と湿度のコントロールは行えません。とくに、梅雨時期や夏場は温度・湿度が高くなりやすく、工場内の温度・湿度が上昇してミスやトラブルにつながることもあるでしょう。
高温多湿の状態を放置し続ければ従業員が熱中症になったり、集中力が低下してケガや事故が発生しやすくなったりする恐れがあります。たとえ優れた製品であっても、工場内の環境が劣悪だと顧客からの評価や信頼を失いかねません。また、従業員が体調不良になり、欠勤や退職する人が増えることも考えられます。
一方で、工場に適した空調設備を導入すれば工場内の温度と湿度を適切に管理できるため、従業員の健康維持はもちろん品質管理や作業環境の向上につながります。また、適切な湿度・温度管理が可能になり、機械の寿命が延びる可能性があることも工場に空調設備を導入するメリットです。従業員が働きやすい環境で品質の高い製品を作れるようになれば、顧客からの評価や信頼も高まるでしょう。ただし、工場の空調設備としてエアコンを導入する場合は、工場に適した製品を選ぶことが重要です。
2.工場に適したエアコンとは?
工場に適したエアコンは家庭用のエアコンと異なり、広いスペースの温度・湿度を管理できる能力が求められます。最適な労働環境を整備するためには、工場の環境や悩みに合わせてエアコンを選ぶことが重要です。エアコンメーカーによっては埃・塵で汚れやすい環境に対応した水で洗える製品や、基盤にコーティングを施して耐久性を高めている製品を取り扱っています。
工場にエアコンを導入する際は、自社の工場がどのような環境であるのかを踏まえたうえで、どのような機能や特徴を持つエアコンを選べば良いのかを見極める必要があります。工場用エアコンの導入が初めての方は、専門業者と相談しながら工場に適したエアコンを選ぶようにしましょう。
工場用エアコンの性能
工場用エアコンは工場で使用されることを前提として作られたエアコンです。工場は埃や塵、機械による熱などが発生しやすいため、防塵や防水など耐久性が高くなるように工夫して作られています。そのため、工場という特殊な環境下でも稼働し続けられるように設計されています。工場用エアコンの主な性能は、耐久性やエネルギー効率などです。空気清浄機能のある工場用エアコンを導入すれば、窓を開放できない環境でも効率の良い換気が可能です。
ほかには、センサーや照明、空調機と連携して制御するシステム連携という優れた機能を持つ工場用エアコンも存在します。自社の工場に適した空調設備を整備することで作業環境が改善されれば、作業効率が向上して工場運営の効率化が図れるでしょう。
3.工場の空調スタイル

工場に導入される空調のスタイルは、大きく分けて次の4つのパターンがあります。
- スポット空調方式
- 部分空調方式
- ゾーン空調方式
- 全体空調方式
それぞれの空調方式の特徴や有効な環境について解説します。
3-1 スポット空調方式
スポット空調方式は、特定の機器や場所の温度管理ができる空調方式です。後述する全体空調は空間全体を冷房や暖房で温度管理する特徴を持ちますが、スポット空調方式は直接風を送り、一定の範囲にのみ温度と湿度をコントロールすることで従業員の熱中症を防止するなどが可能です。
空間全体を温度管理する空調と比べてエネルギーの消費を抑えられるうえに、冷暖房の対象を簡単に変更できることも大きな特徴です。スポット空調方式は局所的な温度と湿度の管理に優れている特徴があるため、溶接作業をはじめとする高温になりやすい場所や工事現場などでも従業員が安心して作業を行えます。
3-2 部分空調方式
部分空調方式は工場内の一部に独立した空調システムを置くことで、特定の区域や部門のみを温度管理する空調方式です。後述する全体空調システムは全室を対象に温度と湿度をコントロールするため、一部の場所のみ温度や湿度を調節するのが難しいケースも少なくありません。
一方で、部分空調方式は区域や部門、部屋別に独立した空調システムを導入でき、個別の温度・湿度調節が可能です。部分空調方式は、工場全体の温度と湿度の管理をする全体空調と比べて省エネ効果が期待できます。生産ラインや扱う製品の種類ごとに設定すべき温度や湿度が異なる工場への導入に適しています。
3-3 ゾーン空調方式
ゾーン空調方式は、ゾーンに設定した空間の温度と湿度をコントロールできる空調方式です。
部分空調方式は温度と湿度の調整が必要な区域や部門ごとに独立した空調システムを設置する方式であるのに対し、ゾーン空調方式は複数のゾーンを1つの空調システムで温度と湿度を制御できる特徴があります。
ゾーン空調方式を工場に導入すれば、空調システムが必要な場所のみ温度と湿度の調整が可能です。そのため、工場全体に従業員が配置されている場合や、温度と湿度をコントロールしなければならない場所が分散している場合に適しています。
3-4 全体空調方式
全体空調方式は、工場全体の温度と湿度のコントロールを1つの空調システムで行う空調方式です。前述した空調方式と異なり、工場内の全てのエリアを一定の温度と湿度に保てる特徴があります。また、広い工場でも1つの空調システムで広範囲のエリアの温度と湿度を管理できることが魅力です。
ただし、一部の空間のみで温度と湿度を個別に調整できないため、適切な温度・湿度管理ができなくなる恐れがあります。全体空調方式は広範囲のエリアを一定の温度と湿度に保つことが得意であることを踏まえると、倉庫や自動車のような大型の組立工場などへの導入がおすすめです。
4.条件を満たせば補助金申請も可能

工場用空調を導入するにあたって、条件を満たせば資源エネルギー庁が運営する補助金制度を申請することが可能です。
資源エネルギー庁は、2024年1月に『令和5年度補正予算における省エネ支援策パッケージ』のなかで、省エネ補助金の実施を発表しています。
省エネ補助金は、工場・事業所に省エネ機器を買い替える際にかかるコストの一部を負担する制度です。工場・事業所における高効率の機器の導入を促進することで、国内全体のエネルギーコストの上昇を防ぐ目的があります。
既存の空調から省エネ効果が高い空調へ更新することで、導入コストの1/3(上限1億円)まで補助を受けられます。空調のほかには、業務用給湯器や産業用モータなどを導入する際の費用も省エネ補助金の対象です。
参考:<a href=”https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/government/data/package_r5_231110.pdf”>経済産業省 資源エネルギー庁「令和5年度補正予算における省エネ支援策パッケージ」</a>
5.ダイキンの設備用・工場用エアコン
ダイキンで取り扱っている設備用・工場用エアコンのなかには、工場・事業所の空調環境の改善や生産品の品質管理に役立つ機能を搭載した省エネエアコンが多数あります。例えば、次に挙げるエアコンがその一例です。
- 設備用エアコン〈ベルトレスタイプ〉VRV-Q更新対応改装
- 設備用ZEAS (機内洗浄可能タイプ)
- 年間冷房中温形
- 工場用ZEAS (天井吊形)
それぞれの主な特徴を解説します。
5-1 設備用エアコン〈ベルトレスタイプ〉VRV-Q更新対応改装
設備用エアコン〈ベルトレスタイプ〉VRV-Q更新対応改装は、置き形タイプの工場用空調です。古くなった空調を買い替える場合は、既存のガス管や液管を再利用できるため導入コストを削減できます。
また、削減できる費用は導入コストだけではありません。ベルトレスタイプのエアコンを導入することで、毎月の電気代の負担も軽減できます。例えば、ダイキンの20馬力クラスの従来モデルと比較した場合、ベルトレスタイプは約56%の電気代の節約につながります。
5-2 設備用ZEAS(機内洗浄可能タイプ)
設備用ZEAS(機内洗浄可能タイプ)は床置き形タイプで、汚れがつきにくいうえに機内洗浄できるエアコンです。吸込口は埃が付着しやすく、詰まると冷却性能が落ちる可能性があります。しかし、設備用ZEASは吸込口の内部周辺(熱交換器・ドレンパン)を水洗いできるため、こまめに洗浄することで常に清潔な状態を保てます。
また、高効率フィルターで空気中に舞う粉塵を集め、結露で湿気が高くなりやすいドレンパンには抗菌塗料を加工するなど、汚れにくい設計が魅力です。
5-3 年間冷房中温形
年間冷房中温形は床置き形タイプで、室内温度10~25℃と幅広い温度範囲を持つエアコンです。室外温度が-15~43℃でも年間を通して安定した温度管理が可能です。
また、消費電力を抑えつつ最大限の冷却能力を確保できる「i-デマンド機能」や、インバーターによる制御で省エネ運転ができるなどの機能が搭載されています。配管の長さは最長165mまで対応しており、室内機と室外機の高低差は室外機が上の場合は50m、下に設置する場合は40mまで対応できます。
5-4 工場用ZEAS(天井吊形)
工場用ZEAS(天井吊形)は天井吊形タイプのエアコンです。冷媒温度をカスタマイズできる機能が搭載されており、用途に合わせた風を作り出せる特徴があります。マイクロチャネル熱交換器の採用により電力消費を削減できるため、省エネに貢献してくれます。
ただし、オプションのロングライフフィルターやオイルミストフィルターが別途で必要です。
まとめ:適切な空調設備で、工場の環境を整えましょう

工場に適した空調設備を整備しなければ工場内の温度や湿度が上昇し、従業員が熱中症になるリスクが高まります。工場用エアコンを設置することで快適な作業環境を整えられるため、従業員の健康維持はもちろん適正な品質管理や機械の寿命延長につながります。
ただし、エアコンにはさまざまな種類や機能、性能があり、数あるなかから自社の工場に適したエアコンを選ぶには、専門業者と相談しながら選ぶことが重要です。そのなかでも、エアコン選びから導入後の省エネ・節電に関する悩みを相談できるサポート体制が整っているダイキンがおすすめです。
- まとめ
- ダイキンでは、工場・事業所の空調環境の改善や生産品の精度保持に役立つ省エネタイプの設備用・工場用エアコンを豊富に取り揃えています。例えば、生産ラインの対人空調や粉塵が発生しやすい現場、温度・湿度を安定させたい現場などに対応できる機種があるため、気軽にお問い合わせください。